寝床<寝床>ふらふらと街中をうろついて なんとなく前方を見ると、 こちらに向かって歩いてくる人影。 こんなとっぷり日が暮れた中、 一人。 誰だろう・・・ もしかして俺の今の状況を話したら 何かくれるだろうか。 何週間か、いや何ヶ月か前にか? (もういつだか忘れたし、 そもそも今日が何月で何曜日なのだか知らない。 寒くなってきたから12月ごろだろう。) 警察に追い立てられて ぼろアパートを出なければならなかったこと。 寒いコンクリートの上にしか 寝床がなくなってから一体何年たったのだろうか。 寒い冬はもう何百万回と越したような気もするし、 まだ10回ぐらいしか越してないような気もする。 高校を辞めて、 仲間と商売をしていたころも定住先はなかったが いつでも寝るところはあった。 それは羽振りの良さそうに見える俺に言い寄ってきた女のベッドだったり、 俺らが売ってたものでラリってる女の胸元だったり、 一家あげてのパーティーでの床だったり。 もしかしたらタバコを一服くれるかもしれない。 もしかしたらここらへんに住んでる人で 一晩泊めてあげよう、 と言い出すかも・・・ (いや、それはないか。) とにかく、一人。 話しかけてみよう。 なんだ、なんで道を渡ったんだ? よく見ると女のようだ。 こんなところでこんな時間に何をしているのか。 ばかだなぁ。 何もくれなくても、 これは何かを力ずくで奪えるかもしれない。 いや、俺はそんなやつじゃないぞ。 (でも、奪えるかもしれない。) 見失わないようにしなければ。 お、道を渡ってこっちに来るな。 話し掛けようとしたのに 立ち止まろうともしない。 失礼なヤツだ。 なんだ、女のくせに。 (2004年12月6日アップ。) |